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おっといけない。話聞いてなかった。
「そこでだ、仮にも貴様は余の娘。温情としてエルメスの地を与える。余の寛大な処置に感謝するといい」
「まじですか!ありがとうございます!」
喜びを隠せない私。それもそうだ、エルメスの蚕は光の反射具合によっては美しい銀に見える 特殊な蚕で、ベネルバ商会として売り出していきたかったけどなにせ王族の所有地…父の許可なくしては取引できなかった。もちろん私の領地なら話は別。
大変都合が良くて結構なことだ。
っと、いっけね。素をだしちゃったわ。オウサマ唖然としてるし。
と思ったらこんとはふるふると肩を震わせて、私のヴェールを荒々しくとった。
「貴様、アィリアのような表面的な美しさすらないというのになんだその言葉遣いは…不敬であるぞ!そもそもこのヴェールも、王である余と顔を合わせようとせぬなど貴様の方が余より偉いとでも言いたいの…か……」
あれれ、私の顔を見てポカンとしている。
私の容姿は母様譲りの美しい銀髪をショートで切っていて、翠のスッとした目は意志の強さと聡明さを表している。ツンと上を向いた可愛らしい鼻にもちもちとしていてその上美白。一目で誰しも恋に落ちるーらしいです。バルが言ってた。流石に誇張しすぎだと思うけど。誰しも恋に落ちるって…バルは別に私に恋してないじゃんか。
取られたヴェールを拾って付け直し、満面の笑みで(隠れて見えないだろうけど)言った。
「では陛下、失礼いたしますわ。どうぞごゆっくり」
パタンと執務室のドアを閉め、ヴェールの存在に感謝していた。
思わず笑ってしまいそうになるのを必死にこらえているこの顔を人に見られるわけにはいかないからね。
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