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「一つ聞いていいですか?」
クロンダイクが老人に尋ねた。
「何だね? おおむねどうして私がこの問題を解決したか。その経緯が知りたいのだろう。知ってどうする?」
「えっと、あの、狩猟業者には何の役にも立たない知識ですが、その……」
ちろちろとエナメルをチラ見する。彼女はまたもや仏頂面した。
「なるほど。わかった。では二人の今後を祝して特別に教えてさしあげよう。単刀直入に言えば自己顕示欲だ」
「はぁ」
「私は見ての通りネット作家だ。お恥ずかしながらフォロワー数には恵まれていない。だが、自己顕示欲は人一倍強い。私には伝えたいものが山ほどあるのだ。さっきの彼にはない。それだけだ」
「なるほど。潜在的な影響力ですか」
クロンダイクは意味ありげにエナメルを見やる。
「狩猟業者が電子遺産滅却士に影響ですって? ありえないわ!」
「痛てッ!」
エナメルの掌が彼の頬に多大な影響を及ぼした。しかしながら、クロンダイクは報復することもなく、むしろそれを受け入れている様子だ。
二人の量子共鳴がこの先どうなるかは、彼の影響力のみぞ知る。
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