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「そ、そういう仲間意識でいつも俺をイジめる。それがお前らの絆かあっ?!」
携帯電話のあぎとが開いた。
「あちゃあ」
そのあまりにも痛々しさに少女は頭を抱えた。人間が努力して絆を深める時代はとうに終わった。マイクロチップが意志疎通を助けてくれる。
「量子共鳴の恩恵に浴せないからといって!」
八つ当たりは許せない、と少女は憤りをぶつけた。マイクロチップからビームをふるって携帯を引きずりおろす。しかし、相手はわけのわからない憎悪の集合体である。
そもそも物理則を無視した存在だ。一筋縄ではいかない。軽々と重力のくびきから逃れると、彼女の頭上で静止した。
「リア充、爆発しろ!」
えっ、と怯む間もなく強烈な閃光が路地裏を照らす。爆風がペール缶やビールケースを表通りに吹き散らす。違法建築がきしみ、電飾看板が雪崩のように降ってくる。
気づいた時、ゴスロリ少女はアスファルトを踏みしめていた。その手がグイっと引っ張られる。彼女の鼻先には見知らぬ男がほほ笑んでいた。とくだん美青年というわけでもないが身長はかなり高めで、優しい瞳とさっぱりした短髪が清潔感にあふれている。
「危なかった」
彼は少女を軽々と御姫様だっこすると、カツカツと足を鳴らして滑るように走り出した。
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