第一章 消失と予感

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1人でそんなことを呟くものの、ここまで来て引き返す訳にもいかず何とか教室へ向かう階段にたどり着く。階段って怖いんだよね。どこにでもあるような七不思議のひとつは階段だったりする。数えないようにしないと思ったのが裏目に出てしまい、逆に意識することになってしまった。13段……。なんとも不吉な数字。ん?でもよく考えてみれば通常が何段か知らない。不幸中の幸いとはまさにこのことだろう。さらに重い足をなんとか動かして上へと登っていたとき。強烈なにおいが私を引き止めた。ー何だろうこのにおい。ああ、思い出した。昔遊んだ鉄棒のにおいだ。さびて赤茶に染まり、嗅ぐと顔を思いっきりしかめてしまうような嫌な香り。その正体はやっと暗闇に慣れてくれた私の目が教えてくれた。 色葉だ。 黒く赤く染まり、もはや元の制服の色がわからない。体の奥からこみ上げてくるものを塞き止めるように、口をしっかり塞ぎ込んだ。が、すぐに体に力が入らなくなりその場に崩れ落ちた。 ー私は今何を見ているのだろう。こんなにもリアルな悪夢は初めて見た。においも衝撃も何もかも。 そして現実に引き戻される。違う、これは夢なんかじゃない。無論私の頭の中で起こっていることでもない。そう思うと自分でも不思議なくらい冷静になれた。あぁ、こういう時ってどうすればいいんだっけ。今になってポケットに入れてたスマートフォンに気がつく。色葉の家、私の家、担任。……警察。そうだ。私は小刻みに震える指を何とかこらえながら1、1、0を押した。プルルルルーガチャッ 〝事件ですか?事故ですか?〟 「……わかりません。友人が、宮城色葉が死んでいます。」
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