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第一章 消失と予感
すっかり暗くなってしまった馴染みの通学路に2人のローファーの音が響く。
「ごめんね。こんなに遅くなって。でもねラフラのおかげで明日の数学のテスト自己最高出せそうだよ!」
「それは良かった。」
そう言って色葉に微笑みかけたあと、夏の夜空に目を向ける。
「やっぱり冬の夜空の方が好きだな。寒いけどその 特典としてすごく綺麗な星が見えるから。今の空も悪くないけどね。」
「前から思ってたけどラフラって案外ロマンチスト だよね。」
「~っ、そんなことない!」
頬を少し赤らめてしまったがこの暗さが役に立ってくれたようだ。夜空に星座を探そうとしたが雲が邪魔をしていることに気がつき、直ぐに焦点を下ろした。
「ああああっ!!英語のノート忘れた……。」
静かな町に大きく響く。
「色葉、それって明日まで提出の課題だよね。」
「実はまだ終わってないんだけどね……。アハハ。面倒 臭いしいっかな~」
「ええっ。赤点常連の色葉さん、ここで点数稼がなきゃ本当に留年しちゃいますよー!」
「留年?!それは嫌!」
「今から学校戻るとかなり遅くなるね、危ないし私も ついてくよ。」
「ありがとう~!天使!」
~♪
「あ、お母さんだ。げっ、帰りにスーパーよって来てだって。こんな時に……。」
「いいよ、私ひとりで大丈夫。また、明日ね。」
そう言うなり彼女は来た道の方へと足早に向かっていった。
「ちょっと!気をつけてね。」
うん と答えながら歩くどこか寂しげな背中はすぐに暗闇に溶け込んいった。
と、その時背筋をなぞるような悪寒が体中に走った。よく分からないけど気持ち悪い。さっさと買うもの買ってゆっくりお風呂にでも浸かろう。 今日は本当に星が綺麗だ。暗黒に散りばめられた光を見上げながら呑気にそんなことを考えていた。
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