第1話 第1幕:カシオ・赤トンボ・ミットナー 最後の戦い

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 ジンの身体は炎そのものとなり、カールの空間を遮断するガントレットでなければ、逆に殴ったカールの拳が燃え尽きていただろう。  ジンが拳を振るう度に、炎の固まりが放たれ、カールの拳がその炎を空間ごと砕く。  カールとジンがぶつかり合うたびに、砕かれた炎が周囲に飛び散る。ルイスは手をせわしなく振りかざして、僕達に当たりそうな炎を宙で爆散させている。僕らの頭上には、細かい無数の火の粉が降り注いだ。 「カシオよ。あの2人、どちらが勝つ?」  ドルン卿は彼らの戦いを眺めながら、闘技を観戦しているかのように勝敗予想を僕に聞いた。 「あの教会騎士が勝ちます」  僕は即答する。 「何故、そう思う」 「魔力の差です。ジンは神の瞳から無尽蔵に魔力を得ています。それに対して、カールは神具内に蓄積された魔力のみで戦っています。魔力が尽きた時、カールは負け、僕達全員が焼け死にます」  神の瞳は空に輝き、約30日周期で満ち欠けを繰り返す、葉脈のような青い線が無数に走る黄色の球体だ。世界は、あの神の瞳を中心に回っているとされている。  全ての魔力は、あの神の瞳から生まれるとされている。教会騎士は、あの神の瞳から直接魔力を補充できると、僕は先生から教わった。  今日の神の瞳は、真円を成し、魔力が最大に高まっている。       
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