第1話 第1幕:カシオ・赤トンボ・ミットナー 最後の戦い

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 カールはよく戦っているが、魔力の低下に伴い、何度か拳を打ち込まないと炎を砕けなくなっている。そのせいで防戦一方になり、少しずつ押され始めていた。ルイスは、流れ弾を防ぐのに精一杯で、戦いに加わる余裕はない。  このままでは、負けるのは時間の問題だ。 「なるほど、理解した。では、その対策を聞こう」 「対策ですか?」 「そうだ。俺は知っている。お前が無策ということはありえない」    ドルン卿は僕のことを買い被っているようだが、確かに僕はこの事態を打開する手段を1つだけ持っている。だけど、その為には、ドルン卿を闇と恐怖の世界へ堕とさないといけない。だから僕は、ドルン卿に問う。 「ドルン卿。神に愛さることは何よりも素晴らしいことです。神の家において愛は無条件で与えられ、人の魂は歓喜に震える。その愛を捨て、魂を荒野の闇に晒し、恐怖と共に生きる覚悟はありますか?」 「神からの寵愛にすがる弱さは要らない。俺が俺を認める。俺がこの世で生きるには、それだけで十分だ」  僕は卑怯者だ。  僕は本当はこの事態を望んでいたのではないのか? 教会騎士が駐留していることを知っていた。神の瞳が満ちる日を脱出の決行日に選んだ。僕が覚悟を問えば、ドルン卿は肯定すると知っていた。  僕はドルン卿を利用して教会騎士を倒すことを、初めから計画に入れていなかったか?  とにかく、承認は得られてしまった。ならば、僕はやるしかない。     
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