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「無名……か。面白い。今日から俺は、クリストファー・無名・ドルンと名乗ろう」
ドルン卿が珍しくニヤリと笑い、手にしたロッドが熱くない赤い光を発し始める。その光は徐々に輝きを増し、ジンの炎の明かりよりも強くなり、森を赤く染める。
「神よ! 俺の下僕たる神よ! この世に存在しない神よ! 俺の名の下に滅びるべし!」
ドルン卿が神を呪う言葉を吐くと、空に輝く神の目に異変が起こる。神の瞳を覆う青い葉脈が赤色に変色する。
それに伴い、ジンの身体を覆う炎が薄くなり始め、ジンが放つ炎もやや小さくなる。
「何だと? 貴様ら、何をした? 我らが神に何をしたぁあああ!!!」
ジンは戸惑いながら怒り叫ぶ。だが、その声も、単なる大声になり、先ほどまでの空気を震わす力がない。
ボゴォ
「ぐおお!!」
炎の鎧が消えたジンの胸に、カールの拳がめり込む。ジンが地に膝をつく。その隙をドルン卿は見逃さない。彼はジンに迫り、ロッドを炎の鎧の中に押し込むと、「炎よ! 俺は何も祈らぬ! 何も願わぬ! 誰の為でもなく、ただ、己がある姿を思い出せ!!」
と告げた。するとジンの身をまとっていた炎が再び勢いを増し、燃え上がる。
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