第1話 第1幕:カシオ・赤トンボ・ミットナー 最後の戦い

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「何だ? 何か不満か? ああ、そうか。カシオよ、口を動かしてもいいぞ」   「先生は間違っていなかった。正しくないのは教会です」  開口一番に僕は大事な人を擁護する。 「痴れ者が。神の在り様に口を出すことは誰にも許されておらぬ」  この大男は、教会騎士のジンだ。教会の代理人として強大な権限を持つ教会直属の騎士のことを、僕達は教会騎士と呼ぶ。誰もが畏怖して、彼らとの争いを避けようとする。  何よりも、教会騎士が恐ろしいのは、彼らは神の言葉を代弁する資格を持つということだ。  教会騎士が動くなと言えば、絶対に動くことはできない。  神の言葉に従え。それが、神の加護の下で生きる者全ての魂に刻まれた契約なのだから。  例え万の軍勢でも、動くことができなければ紙の兵隊だ。だから神のしもべである僕達は、誰も教会騎士には勝てない。 「おぬしは教会裁判で死刑にするから、そこで見ておれ」  短い会話を終え、大男は僕に興味をなくして、また次の従者の検分に向かう。  一通り全員の顔を見回してから、ジンはドルン卿の前に立つ。     
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