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「ふむ。面構えが良い。ワシの見立てではおぬしがドルンだ。どうだ? 正解か? もし、おぬしがドルンでないのなら、おぬし以外の者を全員殺して、おぬしだけは逃がしてやろう。さぁ、口を動かせ。答えてみよ」
ジンは僕と同じように、ドルン卿に話す許可を与える。
ここでドルン卿が否定すれば、他の従者には気の毒だが、時間稼ぎができる。
「俺がドルンだ」
ドルン卿はそれだけを言うと、言うべきことを言ったという顔をして胸をはっている。
もちろん、こうなることは分かっていた。彼は自分が助かりたい為に、その場しのぎの嘘をつくなんてことはしない。彼はいつも強者として威風堂々と振る舞うのだから。
「では、おぬしに天罰を下し、この戦いの幕引きとしよう」
ジンがその身長と同じくらいの長剣を鞘から抜き上げて、高く振り上げる。ドルン卿は、怯えることも、取り乱すこともなく、無言を貫いている。
ザザザザザザ
僕の耳に、草むらをかき分けて、何かが近づく音が聞こえる。
ジンが長剣をドルン卿の頭に目がけて振り下ろす。
次いで、僕の目の前を黒い影が高速で横切る。
バキンッ
ジンの振り下ろした剣が甲高い音を立てて折れた。
ジンとドルン卿の間には、長い黒髪を後ろで結わえた赤と緑の縞模様の服の男が、正拳突きの構えを取る姿があった。
「カール!!」
僕はよく知る彼の名前を叫ぶ。僕の仲間が助けに駆け付けてくれた。
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