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カールは拳にガントレットをはめていた。彼は飛び込み様に、ジンの剣を正確に狙って叩き折ったのだ。鋼鉄の剣さえも、あの拳の前には細枝のようなものだ。間をおかずに、カールはジンの身体に拳を連打する。
「ぬう!!」
ジンは折れた剣を捨て、自らの拳で、カールの拳を相殺しようとする。こうして連打の応酬が始まる。
「動くな!」
ジンはカールに神の言葉で命ずる。だがカールの拳は止まらず、勢いを増す。
「動くな!!」
更にジンは命ずるが、やはりカールが止まる気配はない。
「ジン! 無駄だよ! カールは洗礼名を持たない」
「カシオ!! このような者を配下とするとは!! 貴様は魂の汚れた蛮族と同列にまで堕ちたか!! 神の言葉を聞かぬ、愚か者め!!」
ジンは侮蔑を込めて僕とカールを罵る。カールはをれを意に介さず、無言で拳の連撃率を加速させていく。
ボゴッ
ついにジンはカールの拳を受けきれずに、その身に受ける。カールはすかさず、追撃を重ねて、ジンの巨体が宙に浮く。
「兄貴! 避けて!!」
どこからか叫ぶ声がして、カールは後ろに飛び退く。直後、ある直線軌道に沿った木々の枝や幹が巨大な刃物で切られたかのように、順に切断されていく。その軌道上には、滞空するジンの身体もあった。
バババババ
激しい気流に飲み込まれたかのように、宙でジンの身体が高速で回転し、そのまま森の奥へと吹き飛ばされて消える。
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