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教会騎士はその場からいなくなり、シンとした静寂が森に戻った。
「間に合ったぜ。ざまぁみろ」
呟くような声がして、そちらを見ると、ハァハァと息を切らせた、まだ少年にしか見えない若者が、木に寄りかかってぐったりしていた。
カールの弟のルイスだった。
「カシオ! 俺を置いていきやがって。どうだ! 俺がいないと困るだろ!!」
ルイスは動けない僕のことを指で突きながら苦情をまくしたてる。
「カール。それにルイス。よく来てくれたね。ありがとう」
「……まだっす。ルイス、カシオを守って」
僕のねぎらいに対して、カールが森の奥から視線を外さずに答えた。それでルイスの顔はスッと無表情になり、僕をかばうように、森に向き合って僕に背を向ける。
そして、カールが腰を落とし、何かと対峙するかのように構えを取るのと同時に、ジンが飛ばされた方向が赤く光った。
「不心得者め!! 不心得者め!!」
人にこんな声が出せるとは信じられないほどの、巨大な怒号が森の奥から響き渡り、その声で肌が痺れ、木々が揺れる。
赤い光が徐々にこちらに近づいて来て、やがてそれが赤く燃える炎に身を包んだジンの姿であると分かった。
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