第1話 走る彼はあの子の使い走り

7/22
前へ
/25ページ
次へ
それでも最終的にパシリに落ち着いてしまうのは、やはり八重ちゃんが番長だからなのだろう。 その物静かそうな見た目に反して、一度火が付いた時の攻撃性の高さはまさに“鬼”の如く激しく強いもので、彼女の右手の前には並み居る不良たちも四天王とか呼ばれていた番長も等しく崩れ去る。 彼女の怒りを買った場合、その人物に与えられるのは倍返しではなく『鬼返し』と呼ばれ、それはそのまま彼女の異名となった。 『鬼返しの鬼桜』 群れることはなく、屋上の風とメロンパンをこよなく愛する彼女に近付こうとする者は居らず、居るのは僕というパシリの幼馴染だけ。 あ、自分でパシリと言ってしまった。 まぁ、パシリだろうが小間使いだろうが、八重ちゃんの傍に居られるならそれでいいか。 大事なのはそこじゃない。大事なのはーー 「へっへつ、おめぇが道標って奴か。大事な話があるからよぉ~ちょっとツラぁ貸せや」 ーーこういう人たち……でもないんだけどなぁ。 うーん、嫌な予感しかしない。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加