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八重ちゃんはその見た目通り品性方正で、番長というものの正反対の位置に属するタイプの人間である。
三つ編みにメガネ。絵に描いたような文学す的真面目少女な番長が何処の世界に居るだろうか。
おそらく本人もその自覚はないだろう。
それでも番長というものはボクシングのタイトルと同じようなもので、倒したものに引き継がれる称号と地位のものらしく、なし崩し的に番長に襲名されたのだ。
それが不良の皆さんからしたら気にくわないことこの上ないのだろう。
「おう、聞いてんのか? それともその耳は節穴かぁ?」
しかも驚くことに、今あちこちで女の子の不良たちが男を相手に圧倒しているらしく、八重ちゃん以外にも女番長なる人が誕生してるとかしてないとか。
八重ちゃん以外に強い女の子なんて、一人くらいしか知らない僕からしたらこれは驚かずにはいられない。
「おう! シカトブッこいてんじゃねぇぞ! なんとか言いやがれボケがぁ!」
「あ、すいません気になる木の名前についてでしたっけ?」
「んなこと一言も言ってねぇ! 舐めてんのかてめぇ!」
「いやいや! そんな汚いことする訳ないじゃないですか!」
「て、てめぇ……誰の顔が汚ねぇって~?」
顔中をピクピクさせて震え出す卵焼き先輩。今のは言葉の綾いうやつで……ってこれは言葉に出して言わないといけないことだった!
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