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「まずは何も言わずにそこに座れ」
荒っぽく、ぶっきらぼうな口調。けれど少し高めでハスキーな声がそう命令してきた。
ここで僕がそれに抗うという選択肢はない。若干寂れているものの、掃除等はきちんと行き届いている店内を軽く見回して、言われた通りソファに座る。
うん。座り心地は普通の喫茶店なんかとは一緒だ。
店内には喫茶店とかでよく耳にするような落ち着いたクラシックや軽快なジャズではなく、激しいロックテイストな曲が流れている。
およそ喫茶店には相応しくない音楽なのに、何故かこの店には馴染んでいた。正確には店に、というより客に、なんだろうけど。
チラリと周りに直立している連中を見る。
……明らかに客層に合わせた選曲だ。
僕が状況を把握する為にあっちこっちに気を張り、思考を張り巡らせていると誰かが目の前のソファにドカッと豪快に腰を降ろした。
僕に座れと命令した人物だった。
相対してすぐにわかった。今、僕の目の前に座っている彼女がここに居る不良たちのトップであることを。
それほどまての存在感。威圧感を彼女は持っている。
となると彼女がかの有名な“鬼”の一人か。
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