第1話 走る彼はあの子の使い走り

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けれど、おかしいな。 てっきりいつものように八重ちゃんの十八番『手桜』が炸裂するのかと思ったけれど……ってああ、メロンパンの袋を持っているからか。 卵焼き先輩、命拾いしたなぁ。どのみち拭いきれないトラウマは負っただろうけど。 ご愁傷様である。 つい先刻までバカにしていた相手との絶対的な力の差を肌で感じてしまったのである。後ろの二人も直接見られた訳ではないのに青ざめていた。 三人よりも更に離れている僕にまで届くような、威圧感と殺気だったのだから無理もない。 「それで駆くん。どうしてメロンパンの袋をこの人たちが持っているんですか?」 「えーっと、この人たちの妹さんが楽しみにしてるらしくて……」 あげちゃいました♪とは言い切れない僕。 「妹さんが、ねぇ。三人とも妹さんが居て、その妹さんが揃いも揃ってこのふじ抹茶メロンパンを楽しみにしてるんですね」 ーー偶然って怖いですね。 『ギクギクッ!』 八重ちゃんの声色が少し迫力を増す。 先輩方は何故だか顔を痙攣らせて汗だくになっていた。
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