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そんな先輩たちの方へゆらぁりと歩みを進める八重ちゃん。
「よくもまぁそんなデタラメで駆くんを騙しましたね。知ってます? 江戸時代では『十両盗めば死罪』なんて条項もあったそうですよ?」
「わ、悪かった。ほんの冗談のつもりだったんだ。な? 道標くん」
そうだよな、と目配せをしてくる卵焼き先輩。と他二名の先輩方とそうなんですか? と目で尋ねてくる八重ちゃん。
ふむ、なんだかよくわからないけれどここは頷いておいた方がいいのかな?
「ええ、そうでーー」
「そんな誤魔化しは許しません」
「ごはぁ……!」
メキッ……っと卵焼き先輩の顔が壁にめり込んだ。それは目にも止まらぬ速さで、やられた本人のみならず、僕も先輩方二人も何が起こったのかすぐにはわからなかった。
え、えぇぇぇ!
そんな殺生な。ちょっとくらい話を聞いてあげても良かったんじゃないの?
先輩の頬に小さな手形が残っているところを見ると、どうやら『手桜』が炸裂したみたいだ。
そして先輩が手にしていたメロンパン入りの紙袋が宙を舞って僕の胸元に落ちてきた。
「ナイスキャッチです駆くん」
「う、うん」
飛ぶ方向を計算したのか……一体どんなコントロールだ。
僕の幼馴染の底が知れなくてちょっと怖い。
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