第1話 走る彼はあの子の使い走り

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僕が八重ちゃんのポテンシャルに慄いていると、彼女は「さて、と」と準備体操のように右手をぶるぶる震わせながら残った二人に近付く。 その様は仕事と割り切って動いている死刑執行人のようにも見えた。 やりたくないけどこれも仕事なんだよね、と言いそうな雰囲気。 そんな八重ちゃんの雰囲気を感じ取り、これから自分が辿るであろう末路(卵焼き先輩の姿)を横目に、涙目で抱き合って震えていた。 ただ妹さんにふじ抹茶メロンパンを食べて欲しいだけだったのに、これではあまりにも可哀想だ。 助け船を出すことにしよう。 「八重ちゃん、もうそこまでにしてあげたら? その人たちも悪気はなかったんだし」 「人を騙して物を盗ろうとする行為に悪気がないなんて有り得ないです」 「騙してたのかはわからないけど、それでも怯えている人に何かするのは良くないよ。それに、今度からちゃんと手順を踏んでくれますよね?」 「も、勿論ですっ!!」 食いつくように頷く二人。良かった、これで次から邪魔とかされないぞ。 一件落着……って感じではあったのだけど、八重ちゃんの様子がなんだか納得のいかない雰囲気だ。
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