第1話 走る彼はあの子の使い走り

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「あ、道標くんだ」 「道標くん?」 「え、あんた道標くん知らないの? 南高生なのに?」 「知らない。なに、有名人なの?」 「結構有名人よ。彼本人のことは私もあまり知らないけどね」 「わかった! 生徒会長だ!」 「学校の有名人と言えば生徒会長という気持ちはよくわかるけど、違うわね。そんないい立場じゃあないわ。一般生徒の括りよ、一応」 「となると……陸上部の短距離走で全国大会に出たとか?」 「それも違う。というかなんでそんなに具体的なの?」 「だって今走ってたし、速かったし」 「ああ、なるほどね。でもさっきも言ったけど、そんないい立場じゃあないわ。そういう表向きにとか、輝かしいとかじゃあなくて、もっとこう……裏というか黒いというかね」 「はい、わかった。学園を牛耳る影の黒幕だ!」 「黒幕が有名になったらダメでしょ! 忍ぶ気のない忍者か!」 「えぇー、他に裏で黒いと言ったらオセロくらいしか思い浮かばないよ」 「回りくどい言い方をした私が悪かったわ。じゃあ、あんた鬼桜さんは知ってる?」 「失敬な! 知ってるに決まってるよ! 女の子にして番長! その右手に触れられるのは殴られる相手かお箸しかないと言われ、なんでもやってくれる執事みたいなんかも居て、コンビニに行ったことがないという鬼桜八重ぴょんでしょ?」
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