第1話 走る彼はあの子の使い走り

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……なんて会話が今さっき、中庭に繋がる廊下を通り過ぎる際にすれ違った女子生徒二人によって繰り広げられていたことなんて僕が知る訳もなく、また知りたくもなかった。 高校に上がってからと言うものの、僕は八重ちゃんの『パシリ』として認識されることが多くなってしまっていた。 小中学では言われることがなかったのに(僕が知る限りでは)ここに来て言われるようになった理由は一つしかない。 八重ちゃんが番長になったからだ。 僕の幼馴染である鬼桜八重は今をときめく噂の女番長なのである。そんな彼女のお世話を、まるで忠犬の如く(自分で言ってて少し悲しくなる)走り回り駆け回りその日々を過ごしているのだから、パシリの様に見えても無理ないのかもしれない。 ちなみにパシリというのは「使い走り」をのことを指し、その砕けた言い方である「使いっ走り(つかいっぱしり)」から出来た言葉である。 学校や社会などの集団内で強い立場の者が、より弱い立場の者に(しばしば不当に)用事を命じて使いに行かせるとき、その使いに行かされる者、もしくはその行為を言う。動詞化して「パシる」「パシらせる」と使うこともある。 うん、丁寧に説明するとより一層傷付くものがあるね。 概ねその通りであると言えなくもないのがまた悲しい。
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