1話 五月の怠惰

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 突然だが、大学生くらいになると友人は気付いたら出来ると思っている人はどのくらいいるのだろうか?  今年から一人、地元を離れて都内の大学に進学した僕にもそんな風に楽観的に考えていた時期があったけど実際は全然そんな事なかった。  大学には小中高時代と違ってグループ形成や友人作りの根幹となるクラス分けというのはない。  でも大学にも一応あるにはある。でもそれはゼミと呼ばれるもので十人くらいの少人数で特定のテーマとかで討論や発表する場なのだけど、それは三~四年生辺りからお世話になるらしい。  ……と、なるとだ。大学は今までの学校生活とは違って、自分が学びたい講義を自分で選び自分で時間割を組んで授業を受ける。  同じ大学にいながらも人それぞれ時間ごとに違う講義を取っているから友人を作るのが果てしなく難しいというわけ。  まぁ最初の講義説明で知らない人に話しかけそのまま友人関係を築くというAAA難度も難なくクリアするコミュニケーション能力があれば話は別だけど、生憎僕には無い。  僕には力が無くて講義説明の時に他の人に話しかけることができなかった。だからぼっちだ……と諦めるのはまだ早い。それでも講義によってはグループで討論するものがある。簡単に言うと知らない人と話す機会が出来る。  でも……結果それは大学内ですれ違ったら軽く挨拶をする程度の仲となるか、あえて挨拶をしない他人と決めつける仲になる。ちなみにこれは僕の体験だ。先駆者の言葉ってやつ。  さて置き。例えそこから友人関係を築けたとしても登校時間と帰宅時間の違い、受講講義の違いとかで最終的に疎遠になるのが目に見えている。  つまり僕が何を言いたいかと言うと。  入学早々、運が悪いことに僕。汲沢(ぐみさわ) 千紘(ちひろ)はとある事件に巻き込まれたせいで大学デビューに失敗し、仲のいい友人がほとんど出来ないまま講義が始まって早一ヶ月……いや、二~三週間ほどが経過してしまったという事だ。
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