1話 五月の怠惰

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 友人が欲しいならサークルに入ればいいじゃないかと考える人もいるだろう。  大学のサークルはカードゲームをしたり、地元の幼稚園と提携して児童と遊んだり、アニメキャラのコスプレをしたりと、中学高校の部活動では考えられないような珍しい活動をするサークルもある。  そしてこれはまた個人的な問題だけど、小中高時代の青春とやらを無為に過ごした僕にとってサークルとは友人が出来て遅咲きの青春も送ることもできるという一石二鳥な素晴らしい選択肢だ。  だから僕もサークルに入った。  でもこれはこのサークルに入りたい! ここで大学生活を謳歌したい! とか言ったような殊勝な考えは一切ない。運が悪いことに成り行き上入らざるを得なかったというか、無理やり入らさせられたと言うべきか。  そして今。僕は大学に進学してから更にメッセージを受信することが少なくなったスマートフォンが久し振りのメッセージ大量受信に喜びのあまり震え続けるのを手に感じながら、大学の部室棟三階の左手一番奥。そこの扉の前で立っていた。  扉にセロハンテープで乱暴に貼られているA4用紙には雑に″園芸サークル″の文字が書かれ、その部室からは何故かクラシックが流れている。  というか廊下にいる僕にも聞こえると言うことはどれだけの音量で聴いているのだろう。鼓膜破れるんじゃないのか。  とりあえず扉のノブに手をかけ、深呼吸をした僕は片手でスマートフォンのロックを外し、とりあえずトーク画面を表示する。
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