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「女の方だったんですね。……お茶くらいしか出せませんが」
顔がむくみ、明らかに心を病んだ目付きをしていた。
女だ。
「あー。一応、俺、男なんだけど。その…………」
セルジュは、少しだけ困った顔になる。
「このゴミ屋敷。どうにか出来ないのか?」
彼は少しだけ、鼻を押さえる。
ああ、大切なドレスが汚れる……。最低だ……。
「最初は、手紙でした」
女は、セルジュに手紙を渡す。
彼は渡された手紙の内容に眼を通す。
「日に日に、あいつが私に迫っているのです。今日も、家の外にいました。ベランダから見えました」
「はあ」
彼は少しだけ、困った顔をする。
…………、手紙は、白紙で、何も書かれていなかったからだ……。
デス・ウィングから依頼された事は、探偵業だった。何でも、彼女の骨董品のお得意様で、普通(カタギ)の人間らしい。デス・ウィングは性格的に、他人に悪意ある品物を売るのを好んでいるのだが、この客の場合は、主に彼女が取り扱う、古書やアロマ・オイルといった“無害なもの”を好む常連客だった。一応、この手の客層も付けておかなければ、店の経営費に問題が生じるらしい。
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