三月下旬

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 「お疲れ様です、先輩」  「ああ。お前もな」  着替えを済ませ、更衣室を出た所で先輩とはち会った。何気なく並んで歩く。  「最後の試合、大したものだったな。あれだけできれば十分試合でも勝てるだろう」  「ありがとうございます」  正直、公式試合の勝ち負けなんてどうでもいいのだ。先輩から一本取れれば、俺はそれで良かったのだ。  そこからはしばし無言だった。俺も、そして先輩もあまり喋る方では無い。  気付けば、校門の前まで辿り着いていた。  「……それじゃあ、ここで。………精進するんだぞ」  「…………先輩も、大学頑張って下さい」  言いたいことはそれでは無かった。だが、言えるはずも無かった。  気を抜けば開きそうになる口を抑えつけ、無理矢理笑顔を作って、先輩の背中を見送った。見えなくなるまで、その場でじっと見送った。  誰もいない家に帰ってひとしきり泣いた後、俺は勉強の計画を立て始めた。  先輩の行く大学を目指すには、今から勉強しても間に合うかは分からない。  その上、精進しろと言われてしまっては部活を止める訳にもいかない。  かなり過酷な計画になることを理解した上で、しかし俺は手を止めなかった。
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