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鬼王神社を取り囲む、真っ暗な鎮守の森に潜む怪しい人影が3つ、しゃがみこみ小さくなり、境内に隣接した鬼王幼稚園を恨めしそうに見ていた。
もう辺りは暗いのに、いつまでたっても幼稚園が終わらないのである。
親分が言う。
「いつまで大騒ぎしてるのかね」
「ぐー」
子分は返事の代わりにいびきを返し、もたれかかってきた。
──ぺしん! 頭を平手打ちする親分。
「こら一、親分にもたれかかって寝るとは何事だ! 」
「もう6時間もこんなところにいるんですよ、暇で暇で寝ちゃいますよ、ああ腹減ったす…」
一は何の反省もなくけろりと言った。
人が少ない時を見計らって、境内に忍び込んだのだが、そのうち園児やら、保護者やらが次々と入ってきて、仕方なく森に隠れると、身動きがとれなくなったのだ。神殿に行くには、境内を横切らないといけないので、見つかったら厄介だ。
すると…
「ぐー」
今度は反対側でいびき、そしてもたれかかってくる体。
──がん! 反対側を向いて頭をこづく。
「うひゃー痛てぇ」
「ばか、二、静かにしろ、俺たちゃ潜んでいるんだぞ、暗闇に! 」
「そりゃ、知ってますけどね、あー腹減った」
「全く、お前たちはやる気があるのか、こんちきしょう」
「ありますよ、ありますから、蚊に刺されようと我慢してるんじゃないっすか…」一が答える。
「ふん! 」
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