第1章 鬼王神社の宝玉

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 それには、権三が神馬家代々の教えを棚子や町民たちに貫いてきた事が礎になっている。  その教えとは第1に『町は家族』そして第2に『子どもは町が育てる』この2つだ。  加えて、神馬家が代々鬼王神社の氏子総代としてだけでなく、祀ってある鬼王様の霊力を受け継いだ家系である事も確かだが…。  鬼王神社には宮司がいない。  他の小さな神社と同じように、行事やお祭りがある時に兼任している宮司を呼び、その任をお願いしている。  神社の庶務は、普段は氏子総代である権三を中心に神馬家が取り成している。  鬼王神社も神馬家の土地に建っている。  入り口にある大きな鳥居から100メートルほど広場を歩くと3段ほどの石階段があり、そこに続く鎮守の森を通って少し歩くと、境内がある。  境内の左手には、園長でもある権三が経営している鬼王幼稚園が鎮守の森に囲まれるように隣接し、石畳の参道に広場、中心奥に神殿というレイアウトだ。  ── ── ── ──  今夜は満月。  辺りが次第に暗くなり森がざつきだすと、それとともに鬼王幼稚園は盛り上がりはじめた。  そう、今夜は年長組コアラ組のお泊まり会だからだ。  年に一度のワクワクいっぱいの時間が始まったのだ。  早めの夕食──勿論メニューはカレーライス。子どもたちが大好きなこのメニューも、権三が手配したフランス料理の名コックが作るから半端ない。  食事が終わると花火大会、そして、先生たち総出のお笑いいっぱいの出し物も終わり、参加していた保護者も帰り、子どもと担当の先生だけになり、更に大盛り上がりだった。  それをずーっと、盗っ人三人衆は森の中から見ていたのだ。
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