第六章 対立

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「さすが、プレゼンの神」 「は?」 「だって……。ふふふ……。尤もらしく言ってますけど、要するに私が気に入ったから手放したくないってことですよね? 結婚なんて馬鹿げた契約をしてでも」  雄大さんがため息をつく。 「お前のプレゼンは簡潔すぎるんだ。多少回りくどく言った方が相手の心を掴める場合がある」 「なるほど? せっかくお近づきになれたんですから、勉強させてもらいます」  雄大さんは、同じものでいいかと聞き、バラライカを注文した。 「贔屓してると噂されるな」 「部長のファンに刺されるリスクを背負うんですから、それくらいは大目に見てもらわないと?」 「大丈夫だ。お前が刺される前に俺がそいつを刺してやる」  バラライカを運んできたバーテンダーは、物騒な話をしている私たちに訝し気な視線を向け、空のグラスを持ってテーブルを離れた。 「じゃ、改めて、俺たちの契約に」  雄大さんがグラスを傾けた。 「乾杯」  バラライカとシェリートニックがキスをして、私は本当の意味で共犯者を手に入れた。
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