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愛と狂気は表裏一体。
馨のように、愛する者のために身を引くような美しい愛し方、俺には出来ない。なら、俺は狂気に満ちた愛を貫く。
馨に恨まれても、憎まれても構わない。
その恨みや憎しみを受け止められる距離に居続けられるのなら、それでいい。
馨が俺を罵りたい時に罵れる距離。殴りたい時に殴れる距離。
俺って、やっぱMか?
以前、酔った馨に縛られた時にも思った。
身動きの取れない状況で、これ以上ないほど興奮した。
ま、馨限定だな。
自分の考えに可笑しくなって、思わずふっと声が漏れた。
まだ薄暗い明け方で良かった。
そうでなきゃ、無精ひげを生やしてにやけ顔で歩いている、ただの変人だ。
そうだ。
こんな姿で放り出されたのは初めてだ。
だから、こんな姿で一生に一度の大勝負をしなきゃならないのは、俺のせいじゃない。
ドアの前で泣くと脅したり、縛られて興奮したり、プロポーズした直後に追い出されたり。馨と付き合ってからの俺は散々だ。俺がしたことを知ったら、どうなることやら。
腹の傷が増えるかもしれないな、と思った。
馨に愛された証なら、どんな傷も甘んじて受けよう。
それでも、馨に拒絶されたら……。
俺は一抹の不安に蓋をした。
大丈夫。
切り札はこの手にある――――。
俺は覚悟を決めて、切り札を差し出した。
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