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悔しそうに俺を睨みつけるが、その上目遣いは誘われているようにしか見えない。
「いいぞ? その代わり、上司と部下でなくなったら、迷わずお前をそこのデスクに押し倒すぞ」と言って、馨のすぐ後ろのデスクを指さす。
二人で寝ころべそうなほど広いデスクには、隅にノートパソコンがあるだけ。他の備品は壁のキャビネットの中。
「俺はどちらでもいいぞ? 俺の部屋のテーブルはちょうどいい高さだったが、そのデスクはどうかな?」
「最低!!」と、馨が顔を赤らめて怒る。
俺の部屋でのセックスを思い出したのだろう。どんなに怒っても、可愛いとしか思えない。
俺は一歩、前進した。
馨が一歩、後退する。
「最低で結構」
俺が一歩前進し、馨が一歩後退する。
俺は馨から目を離さず、彼女にも目を逸らす隙を与えない。
「で? どうする?」
「……」
一歩前へ、一歩後ろへ。
見つめ合ったまま、じりじりと移動する。
「俺を秘書として認めるか、俺をクビにして今すぐ抱かれるか」
「…………」
今度は、俺が一歩踏み出す前に馨が後退り、デスクにぶつかった。反射的に身体を抱えるように胸の前で両腕を交差させ、そのタイミングで馨の視線が逸れた。
「どっちにしても、私には都合が悪いじゃない! 公平じゃない!!」
「いや、どっちもお前に美味しい話だろ。優秀な秘書を手に入れられるか、最高のセックスが出来るか。普通は喜んで両方選ぶだろ」
「悪かったわね、普通じゃなくて!」
俺は二歩前進し、馨の身体に触れないように、けれど逃がさないように彼女の身体を覆うようにしてデスクに手をついた。
馨は少し仰け反る格好になった。
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