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「はっ! 自分に五千万もの価値があると思ってんのか!? クソガキ」
「私の価値じゃないわ。お姉ちゃんの価値よ。婚約者が未成年の妹と浮気したなんて、立波リゾートの専務としての立場はボロボロよね? クソガキにもそれくらいわかるわ」
女じゃなきゃ、間違いなく殴っている。
だが、残念なことに、桜は女で、未成年。
「出て行きなさい、桜」
「お姉ちゃんが悪いのよ! 立波リゾートを横取りしようとするから!!」
「出て行きなさい!!」
「どうしてお姉ちゃんは良くて私はダメなのよ! お姉ちゃんはこの人と結婚して幸せになるんでしょう!? だったら! お金くらい私にちょうだいよ!」
意味が、分からない。
とても、馨の妹だとは思えない。
「馨の秘密、って?」
興奮気味の桜に、聞いた。
「馨の秘密が何かによっては、五千万やらなくもない」
『お姉ちゃんが前の婚約者さんにも言えなかった、秘密。知りたくありませんか?』
桜のこの言葉に、俺は興味を持った。
高津も知らない、馨の秘密――。
きっと馨の口から聞かされる日は、来ない。
だが、馨と桜の確執の根は、きっと『ソレ』だ。
馨が高津にも言えなくて、そのせいで桜に亨とは血の繋がりがないことを話せない『秘密』。
「本当? ……本当に、お姉ちゃんの秘密を五千万で買ってくれる!?」
「桜!」
「内容次第だ」
「雄大さん!!」
いくら馨の秘密を知る為とはいえ、この状況を利用するとは、最低だ。こんなことをしたら、馨は俺を許さないかもしれない。
それでも、馨を『秘密』の呪縛から解放してやりたい――。
「お姉ちゃんはねぇ――――」
桜は、楽しそうに言葉を繋いだ。
馨は、その場に崩れ落ちた。
俺は、黙って桜の言葉に耳を傾けた。
「那須川勲の愛人だったのよ」
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