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プロローグ
「んっ……。あっ――!」
数年振りの快感に、思わず声を漏らした。恥ずかしさに手の甲を唇に押し当てるが、すぐにずらされてしまった。恥ずかしいのに、声を抑えられない。
「あ……。ああっ……」
私の膣内に挿入ってくる感触。ゆっくりと、深く。
「きつ……」
彼が目をきゅっと瞑り、呻いた。はぁ、と息を吐く。
「ぶちょ……?」
彼は目を開けると、私の瞳にキスをした。
「萎える呼び方、やめろ」
「え……?」
「痛くないか?」
もっと強引な人だと思っていた。
『報酬はお前の身体で』なんて言う人だから。
「大丈夫」
「動くぞ?」
「ん……」
ついばむような優しいキスの後で、彼がゆっくりと私の膣内を出入りし始める。徐々にスピードを上げ、激しく、強くなる。
「ああ――!!」
私は夢中で彼の首にしがみついた。
「馨……」
耳元で名前を呼ばれて、背筋がゾクッと寒くなる。
ダメ――ッ!
こんなに優しくて甘いセックス、ずるい。
身体だけじゃなく、心も揺さぶられる。
「馨……」
「ん――! だ……めぇ……」
勘違いしちゃダメ……。
彼が欲しいのは私の身体だけなんだから。
「馨……」
どんなに優しく抱かれても、どんなに甘く名前を呼ばれても、愛されてるなんて思っちゃダメ。
この人が欲しいのは私の身体。
私が欲しいのは共犯者。
「馨……」
「や…………あ……」
頭ではわかっていても、心は言うことを聞かない。
彼が私の奥に触れる度、嫌な予感がこみ上げる。
好きになんかなっちゃダメ――。
「馨……」
何度も名前を呼ばれて、何度も絶頂に導かれ、何も考えられなくなって。私はただ必死に彼にしがみついていた。
「雄大さ――」
雄大さんに――――。
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