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第二章 執着
自分でも驚きだ。
名須川の感触に、身動きできなかった。
セックスを無理強いするつもりはなかったが、もう少し押してみるつもりだったのに。
いや、どう考えても無理だな……。
『ぶっちゃけヤりたい』なんて、最低だろ。
真剣に告白して振られたらと思うと、怖かった。
それにしても、言い方ってもんが――。
俺は那須川が残して行った梅サワーの缶を持ち上げた。半分ほど残っている。
俺はぬるくなったそれを飲み干した。
ポケットから煙草を出し、テーブルの上の灰皿の蓋を取った。一本を咥え、火をつける。
深く深くニコチンを吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
『ビールと煙草の味のキスなんて、感じない』
那須川の言葉を思い出した。
煙草やめたら……抱かせてくれんのかな……。
我ながら女々しいと思う。
茶化した言い方をしてしまったけれど、那須川に興味があるのは事実だった。
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