第二章 執着

1/9
3744人が本棚に入れています
本棚に追加
/551ページ

第二章 執着

 自分でも驚きだ。  名須川の感触に、身動きできなかった。  セックスを無理強いするつもりはなかったが、もう少し押してみるつもりだったのに。  いや、どう考えても無理だな……。 『ぶっちゃけヤりたい』なんて、最低だろ。    真剣に告白して振られたらと思うと、怖かった。  それにしても、言い方ってもんが――。  俺は那須川が残して行った梅サワーの缶を持ち上げた。半分ほど残っている。  俺はぬるくなったそれを飲み干した。  ポケットから煙草を出し、テーブルの上の灰皿の蓋を取った。一本を咥え、火をつける。  深く深くニコチンを吸い込み、ゆっくりと吐き出す。 『ビールと煙草の味のキスなんて、感じない』  那須川の言葉を思い出した。  煙草やめたら……抱かせてくれんのかな……。  我ながら女々しいと思う。  茶化した言い方をしてしまったけれど、那須川に興味があるのは事実だった。
/551ページ

最初のコメントを投稿しよう!