それは死んでも教えない

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 死んでわかったことなのだが、あの世では最初にオリエンテーションなるものがあるらしい。 「お亡くなりになった皆さーん、縦2列に整列してくださぁ~い!! これからグループ分けしてオリエンテーションに入りまーす!!」  スーツを着た係員たちに誘導されるがまま、私は人種や老若男女関係ない相当な人数の列の中に飲み込まれた。 「ここからここまでの皆さんはGグループです!! こちらでご説明致しまーす!!」  私はGグループになった。このグループなるものは、ただ単に並んだ順に人数で区切られているものらしく、同じグループの人間に共通項は見当たらなかった。  Gグループは簡素なパイプ椅子だけが並べられた会議室のようなところに集められ、列の順番のまま座らせられた。  先程、Gグループに説明すると言ったスーツの男性係員が、私たちの前に立つ。  見た目は30代くらいの、西洋人に見える。ブロンドの髪にブルーの瞳。極々平凡な日本人の私からしたら、背も高く見目美しい彼はハリウッドスターにも見えてしまう。  そんな彼でもこの世の人ではないのだと思うと、とても不思議な感じがした。けれど、死んでここにいる以上、あの世やこの世だとかいう区別さえもよくわからなくなってくる。どっちがこの世で、どっちがあの世なの、という話で。  わかっているのは、今ここで様々な人々と行動している私は、間違いなく死んでいて、“この世の者ではない”と評される側になっているということだ。 「お亡くなりになられた皆さま、お疲れさまです。私から今後の日程についてご説明致します」  係員の男性は、にこやかな表情で話し始めた。 「亡くなられてから天国と地獄に分かれますのはご存知かと思います。 こちらでは、その天国と地獄に分かれるための裁判をお一人ずつ実施している訳ですが、実はこの裁判、非常に時間が掛かります。現在かなりの人数にお待ちいただいており、その待ち時間は数ヶ月から1年となっております。 お一人お一人の重要な岐路の判断でございますので、何とぞご了承くださいませ」  その説明に、少し会場がざわついた。やはり天国と地獄に分かれるのかという緊張感と、裁判までの間一体何をすればいいのかという戸惑いがあった。  係員の男性は変わらずにこやかに微笑んでいる。
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