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PM17:00
「お疲れ様でした」
軽く頭を下げてドアを閉める。
タイミングよく開いたエレベーターに駆け込むと、疲れた顔のサラリーマンがもう2人。
ゆっくり降りていくエレベーターの中で財布にしまっておいた自転車の鍵を取り出す。
会社の最寄り駅から2駅離れたアパートから自転車で通勤することにしたのはダイエットや節約のためではなく、ただなんとなく外の空気を感じたかったから。
朝起きて通勤して、仕事が終わったら帰ってご飯を食べてお風呂に入って寝る。そんな味気ない生活に少しでも彩が欲しかったというのもあるかもしれない。
ヒールで自転車を漕ぐのにはもう慣れた。スーツにシルバーのママチャリは少し不釣り合いかもしれないが、それもいい。
生ぬるい風が頬を撫でる。
赤信号に差し掛かり、ブレーキをかけたときだった。
ぽつり、と冷たい雫が手の甲を濡らした。
ぽつり、またぽつりとその間隔はどんどん短くなっていき、信号が青になるころには土砂降りになっていた。
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