雨の日、煙草は少し甘い

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翌朝、外は綺麗に晴れていた。 いつも通りの時間に起きて、今日も仕事へ行く。いつも通りスーツを着てシルバーのママチャリにまたがって。 違うことといえばいつもより1つ荷物が多いことと、久しぶりに髪を結っていることくらいだ。 紙袋にはグレーのパーカーと煙草の箱。都合よく会えるとは思わないけれど、帰りにまたあの東屋によってみようと思う。 この日は一日中、雲ひとつない晴天だった。 夕日に照らされた東屋は昨日とはまるで別の所のようだ。昨日と同じ位置に座ってみるけれどやっぱり彼の姿は見えない。時折公園で遊ぶ子どもたちの声が聞こえてくる。 「やっぱりいないかぁ」 ぐっと腕を上げて伸びをする。結んでいた髪を解いて深呼吸を1つ。 捨てるわけにもいかないし、と再び紙袋を自転車のカゴに戻す。 今日もいつも通りの平日だった。
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