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こっちが泊めるか否かを決める立場なのにそんなことを平然という根性にはあきれる。学生のころから変わってないのだなぁ、とこっちが大人になるしかなくなるのだ。
「一泊だけならいいよ」
このままだと話は平行線のまま結局ここで夜を明かすことになるだろうから結果は同じだった。
マキエは仕方なくアンナの話に耳を傾けた。
「なんか疲れて、家を出てきたの」
中学生が家出をするときでももっとましなことを言うだろう。そしてもっと詳しく話してこっちの理解を得ようとするだろう。
あまりにも簡潔に大雑把に言うアンナはとても一人の男性の妻で一人の人間の親とは思えなかった。
なんか疲れて。
学校でも会社でもどこかの総理大臣でも皆「なんか疲れて」ということは常に持っていると思う。それを言ってしまえば糾弾される現代なのに簡単にそれを口にして家を飛び出すアンナはある意味強い人間なのかもしれない。
「なんか、って何よ」
「なんかはなんかよ。私きちんとしてたんだよ。奥さんとしても母親としてもきちんと毎日生活していたんだよ。外で働いていないけど早く起きてご飯作って子供の着替えをさせて自分の化粧水を塗るのなんか後まわしにして子供にご飯食べさせたり、そんな生活してたんだよ」
そんなの母親になった人は皆している。
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