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アンナはマキエの言葉に少しだけ顔を曇らせた。もともと問い詰めた時点で顔は曇っていたけどさっきのテレビの音量に反応したときはいつもの能天気な顔にもどっていたのだ。
「出されないよ。一応メモはしてきたもん」
「それでも私のところにいるくらいは連絡してもいいんじゃない?スマホ持ってきたんでしょ」
「持ってきてないよ。だから待ち合わせに遅れても連絡できなかったんだよ。もう帰ったかと思ってたから、いてくれたときはうれしかったよ」
そこでマキエはようやく相手の本気具合が分かった。
小学生でも自分の携帯を持っているこの時代に、居場所をくらますためにスマホを置いていくのはかなりの勇気だ。今は公衆電話も少なくなってきているのに、よく置いていこうと決意がついたものだ。
特にアンナはスマホ依存症傾向がありそうだ。スマホを片手に家事をしている様子が簡単に浮かぶ。
「じゃあなおさら警察に頼ってそうだけど。それ以上に本当に心配してると思うよ。あんたの両親ちょっと過保護気味なんでしょ」
アンナは高校時代ほとんど両親のどちらかの車で送り迎えしてもらっていた。
お互いに仕事をしているだろうにほぼ欠かすことなく送り迎えをしている様子は異様で、高校生ながら「ちょっと行き過ぎた親だ」と思っていた。
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