安全地帯はどこ①

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 進学を望んでいなかったマキエは高校生の時に取得した資格を利用して都会の会社に入社した。受付や事務作業を日々こなす日々はそろそろ十年目を迎えようとしている。  高校卒業の子が入社するのは珍しい事もあって優しく教えてくれる上司もいた。だがやや感じの悪い上司ももちろんいてその態度には当時いちいち傷ついていたが、今となってはかわいい思い出になっている。 今ではマキエも中堅の立場にいるので後輩に指導をすることもあれば、ある程度の嫌味も「はいはい」と聞けるくらいになっていた。  「結婚の予定とかあるんですか」  嫌味もあればただ単に会話のネタとしてこういう風なことを聞かれることも多々ある。  この年になれば友達の中には結婚して妻や母親になる子も多くいるがマキエにとっては別世界の話だった。  二十代前半部分で学生時代から交際していたカップルが結婚していきその世代が子供を持ち始めると今度は社会人になってから知り合ったカップルが結婚し始めた。  面白いくらいに平均的に多くの友達が結婚している。  マキエはというと恋人はときどきいたがあまり長くは続かず今も一人で結婚の見通しはない。もちろん子供を持つことも考えられない。  金銭的な面だけでなく結婚も子供も自分には必要ないものだ、とすでに答えをだしていた。  結婚は面倒だ。子供なんてもっと面倒だ。     
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