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噂話の中のアンナはいつも悩みがなさそうだった。あるがままに生きている。
結婚生活も順調だと聞いていた。専業主婦に落ち着きなれない料理や家事をしながら夫を支え、結婚して二年後には子供を授かったとも聞き、文字通り誰もがうらやむ光だけ集めた人生を歩んでいた。
マキエが聞いているアンナはそういう、きれいな定形文の人生を生きている人間だった。
その人間が今、輝く人生から逃げて自分のところに来ている。この事実は晴天の霹靂もいいところだ。
この事実はマキエにとっては明るい日差しをくれるものでもあった。
自分には何一つないものを、人生の成功しか持っていない人間が追い詰められて自分に助けを求めている姿は極上の蜜だ。
最低なことはわかっていても顔のゆるみは止まらない。
この気持ちも人間のどうしようもないところの一つなのだ。
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