3人が本棚に入れています
本棚に追加
安全地帯はどこ②
泊めるのは一日だけの約束だったがいつのまにか三日すぎていた。
たった三日だがアンナはすっかり居ついてしまい狭い部屋で料理を用意してマキエの帰りを待ったり、ときどき出かけたりしてはブランド物のバッグや靴を見せてきた。
両親の死や日々の家事育児に疲れて精魂尽きて頼ってきたという事実は本当なのだろうが、アンナは楽しそうな姿を何度もマキエに見せていた。
都会の生活を少なからず楽しんでいる様子を見れば弱っている時期など人間なら誰にでもあるから、仕方がない黙ってみていてやるかという気持ちは無くなる。
落ち着いていた不機嫌が徐々に沸騰し始めていたので、マキエは仕事場でも何かとミスをして苛立ち、後輩の遅い仕事に苛立ち、果てにはいつも使っている自販機で買っているコーヒーが売り切れていて爆発しそうになった。
会社だということもあり何かものを投げたり大声をあげたりすることはしなかったが、今日こそはアンナに一言言ってやろうと気持ちを固めた。
昼休憩が終わり席に戻って大きめのため息をついてから仕事を再開しようとすると、後輩である男性社員のオオスギからチョコレートを渡された。
「これ食べてください」
最初のコメントを投稿しよう!