安全地帯はどこ①

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 決してゆとりのある生活とはいえないのにこんなまずいシナモンロールを買ってしまうなんて、ばかなことをしてしまった。こんなことなら買わなければよかった。 コーヒーと合わせれば五百円程度の出費だがマキエにとっては大きな出費だった。  本当は家で一人でお酒を飲んで過ごすつもりだった。ここ数年のクリスマスはいつもそうだったから特別さみしいとも思わない。  今年もそのつもりだったのに今日の早朝に高校時代の友達であるアンナから連絡がきたのだ。  『ちょっと会わない?』  アンナとは仲は良かったが定期的に連絡を取るほどの仲ではない。思い入れもない。それなのにたったこれだけの文章をよこしてきた。 面倒だなとも思ったがマキエも暇だったので会うことになった。  就職を機に都会に出てきたマキエと違いアンナは新幹線で二時間かかる先にある地元に住んでいる。移動時間が必要なためデートのゴールデンタイムの時間にかぶってしまったのだ。  たしかアンナは結婚して子供を一人産み、今は専業主婦をしていると聞いている。  働いていないのなら昨日のうちに連絡をくれれば、こんな時間に待ち合わせをしなくても済んだのに。育児や家事の都合があるのかもしれないが働いているわけではないのだから融通は利くはずだ。     
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