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普段お菓子をくれるような子ではない。マキエはうれしいというよりも何かあるのかという疑いの念を込めてオオスギを見た。
「どうしたの?誰かからの差し入れ?」
どう見ても菓子折りに入っているようなチョコレートではないので冗談の意味も込めて聞いた。
「違いますよ。ため息ついてたから甘いものでもどうですか、って意味を込めて渡したんです」
さっきの様子を見られていたようだ。
意識もしていない相手から自分の一挙一動を見られるものほど気味の悪いものはない。
明らかにマキエは表情を曇らせて自分の手のひらにあるチョコレートとオオスギを見比べた。
「ため息って私にとっては息継ぎみたいなものなんだよね」
チョコレートを引き出しの中に入れた。その中にはほかの同僚からもらったお菓子がまだあった。いつ貰ったのかすらわからないが多分食べられるだろう。
「泳いでもないのに息継ぎするんですか?」
そう言い少し体を傾けるのでオオスギのネクタイの結び目の小ささが目に入った。
ネクタイの結び目を小さくすることにこだわっている。それは彼の高校時代の教師が「ネクタイの結び目は小さいものほどいい」と言っていたからという多くの人が聞き流すことを覚えていたかららしい。その気味の悪い生真面目な話は強く印象に残っている。
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