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この質問をするところにも直球の生真面目さが込められていた。
「私はときどきエラ呼吸しているから」
「エラ呼吸なのに口でため息をつくんですか」
また生真面目に聞いてくる。
でもその顔はマキエの冗談に乗っているもので思わず笑ってしまった。
笑うつもりなんてなかったのに物好きにもこうして返してくれるのは笑うほか見当たらなかった。
マキエが笑うとオオスギも笑い始め「じゃあ、仕事しますね」と戻っていった。
いったい何をしに来たのだろうと考えたが仕事に取り掛かるうちにいつの間にかそのことを考えるのを忘れていた。
その日は三十分だけ残業をして帰るつもりだったのだが定時になる頃にスマホが三回鳴り、それぞれ留守電になるほどなり続けるのでとうとう根負けした。
仕事中はスマホを触らないと決めているのだがここまでかかってくるのだから何かあったに違いない。
画面を見るとそこにはアンナの番号があった。
アンナはスマホを家に置いてきたと言っていた。ということはこれをかけているのはだいたい予想がつく。
マキエは迷ったが四回目の着信があり反射的に出てしまった。
「あの、わたくしアンナの夫のダイスケですが。失礼ですが妻をしりませんか」
思っていた通りの人物と質問だった。
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