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オオスギのおかげで気分が少しほぐれていたせいかマキエはアンナのことを素直に話すことに気が引けていた。
すぐ話せば今日にでも連れ帰ってもらえるだろうが「ただなんとなく」という気持ちだけではっきりとは答えないことに決めた。
「すみません今仕事中でして」
「知っているかどうかだけ教えていただければいいんですけど。警察に届けを出そうと思ってまして」
ダイスケの声は憔悴しきっているというにはまだ元気があった。妻の性格を十分に知っているからだろうか。もしかして同じようなことが前にもあったのだろうか。
思ったよりもはっきりとした口調なのであまりアンナのことが心配ではないのだろうか、と思った。
「アンナに何かあったんですか?」
アンナがここに来た理由がもしかしたら旦那が原因かもしれない。ドラマのような筋書きが頭の中を駆け巡ったが、ダイスケはため息をついた。
電話の向こうでつくため息はボウっと耳に響き警報のような緊張感がある。
「わからないんです。普通に生活していたと思ったのにいきなりメモを置いてどこかに行ってしまって。携帯を置いていったので連絡も取れないですし。今五人に連絡を取ったんですけど誰もわからなくて。本当に知らないですか」
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