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疑っているというよりも確認する口調で聞いてくるのでマキエは「知らない」と答えた。
不機嫌さは落ち着いているがあんたがきちんと妻を見ていないからこうなったのだ、と言いたい気持ちを込めて意地悪を続けた。
「メモだけ残して行くなんて。まったく、何を考えているんだか。子供もそろそろ会いたがっていてちょっと大変で」
「大変ですね。お仕事は休まれているんですか?」
しらじらしい声で聞くとちょうど遠いところで子供が何か言っている声が聞こえた。高い声だ。
そういえばアンナの子供の性別はどちらだろう。友達の子供にはあまり会わないのであいまいだ。声が高いから女の子だろうか。
電話の向こう側でごそごそとなだめるようなやり取りがりダイスケは最後に言った。
「どうにかごまかして実家に預けて仕事をしています。本当に勘弁してほしいです。いきなりすみませんでした。お仕事中。あの、なにか妻から連絡があればすぐに知らせてもらうことはできますか」
「そうします。ご無事だといいですね」
言っていて本当に意地が悪いなと思ったがそう言うことは気持ちがよかった。
電話が切れてから時計を見ると定時がすでに回っていて同僚たちも帰ろうとしているところだった。
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