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会社のだろうが個人のだろうがマキエには関係ないことだった。友達以外の人と食事をするのは苦手で料理に手が進まない。だから同僚との飲み会も極力避けているほどなのに。
オオスギは何のたくらみもなく純粋にマキエを食事に誘っているようだ。
「今日は持ち合わせがないの。それともおごってくれるの?」
こう言えばあきらめるだろうと思い言ったがオオスギはうれしそうな顔をしながらうなづいた。
「そのつもりで誘ったんですよ。行きましょう」
そう言うのでもしかして今日自分を口説くつもりなのかとうぬぼれたが、一緒に食事をして自分が口説かれる様子を想像すると恥ずかしくて喉に見えない何かがつっかえた。
恋についてはもう面倒な印象しかないマキエは困りながらどうしようかと白い息をふうと吐いた。
すると白い息が消えていく先にアンナの姿を見つけた。
アンナはマキエのほうを見て十代の女子がするような好奇心と初々しさを秘める笑み浮かべている。
なんてところを見られているんだ。恥ずかしくて死にそうになる。
その気持ちもあってか「行きましょう」と促すオオスギの言葉を遮ってアンナに手を振った。
「何しているの」
オオスギは怪訝な顔をしてアンナのほうを見て首をかしげて再びマキエに顔を向ける。
「お知合いですか?」
アンナは小さく手を振りながら「くすくす」という笑いを押し殺して近づいてくる。
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