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待ち合わせの時間を軽く三十分も過ぎているので「早く来ないだろうか」と、窓ガラスの向こう側のカップルたちの頭に隕石が落ちてくるのを想像しながら待った。
そしてコーヒーがすっかりアイスコーヒーになってしまった頃やっと窓ガラスの向こう側から手をふるアンナの姿があった。
ほとんど手を付けなかったシナモンロールとコーヒーを捨てて外に出ると、背骨まで凍る寒さがが体を包み一瞬最悪な気分になるが、もう一か月ほどまえから冬用の体になっているのですぐに慣れた。
アンナに「久しぶり」と言いながら、なじみの居酒屋に足を向けた。
「ごめんね遅くなって。ここまで来るときにバスが遅れて結局タクシーできたんだけど渋滞にはまってね。都会はやっぱりすごいね!」
アンナは明るく楽しそうな口調だった。少しオーバーなくらいのリアクションで、マキエはそのテンションについていける気分ではないので「そうね」とだけ答えた。
ざっと目を向けるとアンナは少し濃いめに化粧をしており友達に会うにしては大きなボストンバッグとショルダーバッグを肩にかけていた。明らかにどこかに泊まる装いだった。
うんざりするくらいカップルを見たのに外を歩いているとどうやら夜の街を歩いている九十パーセントがカップルのようだ。
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