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女は着飾り男もそれに合わせていつもより背伸びした格好をしているのはその人物をよく知らなくても分かった。
この世の最も醜いもののようにカップルをよけながらマキエは聞いた。
「こんな時間に来るってことは今日はどこかに泊まるのよ?」
「そうそう!でもビジネスホテルとか結構高いのよね。もっと千円くらいで泊まれるところがあるのかと思ったけど、本当に都会って感じ。だからマキエのところに泊まらせてよ」
おおよそ予想がついていたのでその発言に驚くことはなかったが何の気遣いもなくあっけらかんとそういわれると、いくら友達といえど気分が悪かった。
ただでさえ不機嫌なのにこれ以上不機嫌を煮詰めてどうしてくれるんだ。
ポケットに手を入れて肩を上下させてから自分を落ちつかせる。不機嫌な気分が高まったときにする癖だ。
「ね?一人暮らしなんだからいいでしょ」
社会人になってこのかた誰かと生活することはなかった。実家には不定期に帰っているが、そういえば一年以上帰っていない。もう家族と一緒に食卓を囲ったり同じ風呂やトイレを使うことさえうっとうしいものになっている。
「ほかに行く当てがあるでしょう。うち狭いし、それにここらへんはネカフェもあるんだからそこに泊まればいいじゃない。どうせ一泊なんでしょ」
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