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台所と洗面台を兼用しなければならないことも我慢しなければならないところだが、この街で働いて生活していくにはここの家賃を払うのが精いっぱいだ。
入ってくるなりアンナはたった二足でいっぱいになってしまう玄関に驚き、ベッドとテーブルの距離が驚くほど近くさらに台所は二歩で行ける距離の短さになぜか喜んでいた。
「本当にここに住んでるの?」
「他人の家に連れてくるわけないじゃない。コートはそこにかけといて」
玄関の前においてあるスタンドからハンガーを渡すとアンナはたったそれだけのことなのにやけに喜び、襟に白いファーがついたいかにもギャルが着そうなコートをかけた。
ものを置くことがあまり好きではなくたいしておしゃれでもないのでマキエの部屋の中は狭いわりにすっきりしている。身に着けるものも家具も日用品も化粧品も食べ物も最小限しかそろえていないので、初めて来た人は男の部屋かひどく潔癖の人の部屋なのかと思われる。
「もうちょっとなにか置けばいいのにー。インテリアとかお花生けるとか」
テーブルにコンビニで買ってきたお酒やおつまみやおにぎりがはいった袋を置いて、カーペットを敷いている床に座るアンナ。
着ているものがファンシーなワンピースのせいで自分の部屋に宇宙人がいるみたいだ。
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