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安全地帯はどこ①
クリスマスの夜のファーストフード店は学生のカップルが多い。食事に大金を払うこともできず特に未成年のカップルはお酒を飲むことができないので安い居酒屋に入ることもできない。
安くてすぐに舌がおいしいと思える食事と少しだけ話せる時間を持つにはファーストフード店が一番だ。
頭では理解しているのだがマキエはうんざりした気持ちで甘すぎるシナモンロールと、苦いだけのホットコーヒーを目の前にして人を待っていた。
二十代最後のクリスマスを油と塩とカップルたちの一時的な甘さの中で過ごすとは思っていなかった。もちろんもう数年前から恋人と過ごすということも思い描いていなかったので、大きく期待が外れたというわけでもないが不愉快だった。
ここ数年ずっと自分は不愉快だ。生理前でも生理不順でもなければ嫌な上司もいないし、嫌な同僚もいない。便秘でもない。体調は良く人間関係にも悩みなどないのにずっとずっと機嫌が悪い。
「はあ」
ため息をつくが店内の若者言葉に飲み込まれてなかったことにされた。まったくため息をつくことすらも満足にさせてくれないのか。
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